木造住宅の耐震化とは

法隆寺や東大寺など、現存する歴史的な建築物の骨組みが木造であることは周知のとおりです。このような神社仏閣は、材料も建て方も特殊で、費用と時間をかけて修繕しています。一般の住宅と横並びで比べることはできませんが、伝統工法の良いところを引き継いで住宅建築の技術が発展してきたのも事実です。

木造は伝統ある工法だと認めつつも、「地震に弱いから不安だ」と感じている方は少なくありません。大規模地震が起こるたびに、無残に倒壊している様子が報道されるのが一因のようです。

 

これらの倒壊状況から、木造住宅の弱点が見えてきました。そして、この弱点を補う「耐震補強」という考え方が生まれました。

 

注)木造住宅の構法は複数ありますが、このページでは「軸組み工法」について表記します。

暮らしやすさの追求と弱点

南面に長い縁を設けて、大きな開口から風と外光を取り込み、畳が傷まないように障子で仕切り、襖を取り払えば隣室とつなぐこともできる…

 

日本古来から伝わる建て方「木造軸組み工法(在来工法)」には、四季をいかに快適に過ごすかを第一に考えた先人の知恵がつまっています。

また、雨や日差しにさらされる屋根は、耐久性の高い陶器瓦が重用されてきました。焼き物特有の重さがあるので、屋根下地となる骨組みは相応のしっかりとした造りになっています。

 

しかしながら度重なる地震の被害状況から、これら木造の伝統的な建て方に耐震上の弱点があることがわかってきたのです。

 

例えば、お座敷まわり。

 

大きな広縁、開け放つことができる連続した障子、襖で仕切られる続き間…ひろびろと魅力的な空間ですが、上部の重みを支えるべき壁や柱が充分に備わっているとは言い難いですね。

 

グラッと揺れたら、どうなるでしょう?

建物が揺れると、屋根や上層部の重みが「逆さ振り子」のオモリとなり、骨組みに急減な負荷がかかります。

 

下層部に大きな開口部がある建物は、特に危険です。揺れによって建物がねじれ、「頭(上層部)の重さ」に耐えきれずに骨組みが崩れ、上層部に圧し潰されてしまうのです。

 

 

 加えて、老朽化も見過ごせない危険因子です。 シロアリの喰害、雨漏りによる腐朽などで骨組みが傷んでいたら、強い揺れに抵抗するどころか、一溜まりもなく倒壊してしまうでしょう。

木造住宅は傷みやすくて地震に弱いのでは…と不安になられたかもしれませんが、木造であることそのものが地震に弱いわけではありません。

適正に修繕して経年劣化を抑える、重たい上部を支える壁を造るなど、弱点とされる「壁・開口部」と「老朽度」を改善する、つまり「耐震化」すれば、激しい揺れにも耐えられるようになるのです。

軸組み工法ってなんだろう?と思われた方は、まずはこちらをお読みください。

木造住宅の耐震性評価のポイントは?

そこで木造住宅の耐震診断は、「壁・開口部」と「老朽度」を注視する仕組みになっています。

「壁」と一口に言っても、下地や仕上げ材の組み合わせの違いから、様々な種類があります。 

土壁(どろ壁)に漆喰仕上げ、石膏ボードに壁紙仕上げでは、見た目だけでなく、地震に対して踏ん張る力も違います。

 

また、窓や襖、障子、欄間などでくりぬかれている壁は、地震に強い壁とは見なせません。

 

耐震診断の現地調査では、壁一面ごとに下地と仕上げの種類、窓などでくりぬかれているところはどこかなど確認します。

【壁の量】

地震の揺れに対しふんばってくれる壁が、必要な量あるか?

 

空間の内部に仕切り壁があればあるほど、揺れに対して踏ん張りが効きます。壁の量が足りているかは、床面積当たりの必要壁量に対する「充足率」を求めて確認します。


【壁のバランス】

地震の揺れに対しふんばってくれる壁が、東西南北バランスよく配置されているか?

 

どの方向にどのくらいの強さで揺れるかわからないのが地震の怖いところ。壁の配置に偏りがないか確認します。


【建物の老朽度】

建物がどれくらい老朽しているか?

 

構造部の腐れ、シロアリの喰害、著しいヒビ、構造接合部のゆるみなどがないか、建物内外周だけでなく、床下や天井裏にも侵入して目視します。 


巨大地震は対岸の火事ではありません!!

2005(平成17)年の福岡県西方沖地震の発生当時、「こんなに大きな地震が福岡で起こるなんて!」と思われた方は少なくないでしょう。あの時、大難を免れて安堵したことで、すっかり地震の怖さを忘れかけていませんか?

まだ記憶に新しい

2016年4月 熊本地震


福岡県では

最大震度5強

いつ起きてもおかしくない

南海トラフ巨大地震


福岡県では

最大震度5強

内閣府 報道発表資料(2012年8月29日発表)

身近に潜む

警固断層南東部地震


福岡県では

最大震度6強

福岡市発行「ゆれやすさマップ」


最近では、非常食の備蓄や持ち出し品を準備している方が増えてきているようです。日頃から心がけておけば、いざという時に落ち着いて行動できるでしょう。

家族の中で、非常時の安否確認の方法や避難先について、取り決めをしておくことも大切です。

 

 

しかし、想定を超える地震に見舞われたら…家財が倒れ、逃げ道を塞がれ、もはや避難どころではなくなってしまうかもしれません。大切な住まいが倒壊してしまうかもしれません。

 

まずは身の安全を確保するためにも、倒壊しない状態にする。つまり「耐震補強」こそが、取り組むべき防災対策なのではないでしょうか?

信頼できる耐震診断と耐震対策を

「震度6強!そんな地震が来たら我が家はどうなる?」と心配になった方は、まずは耐震診断を受けてみましょう。今の耐震性が明確になれば、適正な補強方法を検討することができます。

訪問営業やセールス電話などで、「壁が割れているから脆い」「屋根がずれているから危険」と言葉巧みに不安をあおって、いきなり金物取付や屋根工事を勧める業者には注意してください。

有意義な耐震化は耐震診断あってこそ、ということお忘れなく!