形ある状態を傷つけずに、なるべく詳しく状態を調べ、分析結果を補修・補強に反映させる…既存住宅の耐震診断の流れは、人の健康診断によく似ています。
建物の変形(傾き)は器具で測ることができますが、劣化度合いは目視で評価するのみ。当然に診る側の力量、意識で結果が変わってしまいます。
自分の健康診断の依頼先を決めるとき、少しでも多くの情報を集めて、信頼できそうなところを探すのではないでしょうか?
耐震診断の依頼先選びも同じです。耐震の考え方、調査内容のあらましを知っておくだけでも、依頼先の選択に役立ちますよ。
既存住宅の耐震性を調べる方法として確立されているものは、一般財団法人 日本建築防災協会が発行している 2012年改訂版「木造住宅の耐震診断と補強方法」です。「一般診断法」と「精密診断法」の2種類がありますが、通常の木造住宅は破壊検査を要しない一般診断法で行われています。
私たち福岡市耐震推進協議会も一般診断法に則って、大きな地震動での倒壊の可能性について評価します。
評価する項目は、主として壁の強さ、壁の配置、劣化度、柱と壁の接合部分等であり、目視・非破壊にて現況を観察しています。
先述の通り、耐震診断の分析方法は確立されていますが、診断専門の「公的資格」は用意されていません。現況の見極めは、経験で判断が左右されるので、研鑽を積んだ技術者に依頼したいところです。
消費者の方々には、一級建築士が建築業界では最も万能な技術者だと思われているようですが、耐震診断に関しては、必ずしもそうとは言えません。専門家で診療がわかれる医学分野のように、建築業界も専門性は細かく分別されます。既に建築されて何年も経過している建物の耐震性を分析するには、それ相応の知識と経験が必要なのです。
資格がないだけに誰でもできる。しかし適正な診断は誰でもできるわけではない、と知っておきましょう。
現在、複数の民間団体が認定講習を開催し、受講修了者に対して「民間資格」を付与しています。
私たち福岡市耐震推進協議会では、日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(略称:木耐協 モクタイキョウ)の認定を受けた技術者が耐震診断に携わっております。
木耐協の耐震技術認定者講習会は、一級建築士・二級建築士・木造建築士の資格を有する者、あるいは木造建築工事業の実務経験が7年以上であると所属する会社が認めた者しか受講できません。講習会の考査に合格して、ようやく耐震技術認定者として耐震診断を実施できます。
また、耐震技術認定者は3年に1度更新講習会を受講することが義務付けられており、その都度、考査試験を行っています。
木耐協では耐震技術認定者講習会以外にも多くの研修事業を行っており、耐震技術認定者は日々技術・知識の研鑽に取り組んでいます。